「だれ、」と聞くので「俺だ」と返事するが、その返事が聞こ
えないらしい。
近頃、特にひどくなってきた。
「俺だ」では、理解出来ないらしく「俺って、誰だい」と聞かれる。
勘弁してよと思いながら、自分の事を「息子さんだよ」とか「まこ
とさんですよ」と言うが、すんなりと納得出来るというところまで
いかない。
それでいて、つい愚痴をいったりすると聞こえたりするんだよ。
「なんだい、聞こえるのかい」というと、母が「そんなことはない
よ」と返事だ。
聞こえたり、聞こえなかったりで波打っているそうだ。
母も部屋に一人っきりの時間が多く、ヘルパーさんが話し相手
の中心の状態だ。
誰にでも来る「老い」。
老いて身体が思うように動かなければ、誰かの母の様に助けを
得なければならない。
いずれは、自分もと意識しなければならない。
その意味で、介護施設の存在が大きいとおもう。
それも、慣れると「有りがたい」から「ちょっと、不満」への間の
問題が出てくる。
いずれにしても、自分の良い立場を維持するには懐具合で決ま
るのだと思うと、考えさせられてしまう。
春風するめ