日本に帰りたい...

古きをたずねて新しきを知る...。

有名な言葉だ、雑誌をみて、このことばを噛み締める気持ちに

なった。

何故、私がそのような気持ちになったか解らない。

その年齢になったのか、それとも精神的に成長したのかと、一瞬

思いを巡らせながら母に、バナナを食べている最中に「もう、いら

ない」と、言う口癖が始まった。

時々、おこる現象だ。私はその様に捉えて根気よく「バナナだよ、

もう少しで無くなるから」「口を大きく開けて」といって聞かせて、

今日まできている。

本来の目的は、朝と昼食をあまり食べないと施設の方にいわれた

時期が多かったので、この様になったのが始まりかな。

バナナを選んだのは、母の年齢と照らし合わて、昔は高価で、運動

会でしか食べれなかった物だからだ。

おいしいバナナを、食べ終わって「日本に帰りたい」と、いいだしたの

には、驚いた。

私は、「ここは、日本だよ」と、母に対しての状況判断なしで出た言葉だ。

しっかり者の母でも、まどろみの中で状況を間違ったかと。

多分、バナナの臭いで情緒不安定になったのだろうか。

何せ鼻のきく人だから。

そのようなことを思うと...、悲しくなる。

今の母は、過去を思い出すだけで、新しきを知るところに気持ち

をもっていくこと出来ないのだ。

でも、私は願うよ。

しっかりしてくれよ「母さん」と、思いを改めて。

 

 

春風するめ

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